近年、ふだんの生活の中で外国の方に出会うことが多くなってきました。買い物中に聞こえてくる会話が外国語だったり、コンビニで外国人の店員さんが日本語で対応してくれたりします。介護の現場や、農作業、工事現場などでも外国の方が働いています。このような方々が日本で適法に仕事や生活ができるのは、在留資格を持っているからです。では、在留資格とは何でしょうか?

それは、『出入国管理及び難民認定法』に定められています。

そこで、まずは『出入国管理及び難民認定法』がどのような法律なのかを見ていきます。


<目的>
第一条 出入国管理及び難民認定法は、本邦に入国し、又は本邦から出国する全ての人の出入国及び本邦に在留する全ての外国人の在留の公正な管理を図るとともに、難民の認定手続を整備することを目的とする。

(1)公正な出入国管理及び在留管理の確保
  ①日本に入国し又は日本を出国する全ての人の出入国の公正な管理(「全ての人」は、日本人も外国人も対象です)
  ②日本に在留する全ての外国人の在留の公正な管理(「外国人」とは、日本の国籍を持っていない人です。)

出入国在留管理基本計画(第61条の9)
 「公正な出入国管理及び在留管理」をするため、法務大臣が計画を定めることと規定されています。
 そして、法務大臣はこの基本計画に基づいた管理をするよう努めなければばりません。(第61条の10)
 2019年4月に定められたこの計画に基づき、「出入国在留管理基本計画における基本方針及び対応策(今後の方針)」として6つの基本方針が示されています。
❶我が国経済社会に活力をもたらす外国人を積極的に受け入れていくこと
❷開発途上国等への国際貢献の推進を図るとともに、技能実習生の保護の観点から技能実習制度の適正化を推進すること
❸受入れた外国人との共生社会の実現に向けた環境を整備していくこと
❹訪日外国人旅行者の出入国手続を迅速かつ円滑に実施することで観光立国の実現に寄与すること
❺安全・安心な社会実現のため、厳格かつ適正な出入国審査及び在留管理と不法滞在者等に対する対策を強化していくこと
❻難民問題については、国際社会の一員として、適正かつ迅速な保護の推進を図っていくこと

(2)難民の認定手続きの整備
難民とは・・・
「難民の地位に関する条約」(以下「難民条約」という)第1条の規定又は「難民の地位に関する議定書」第1条の規定により難民条約の適用を受ける難民をいう(第2条1項3号)
 『難民条約の適用を受ける難民』とは、「⼈種,宗教,国籍,特定の社会的集団の構成員であること⼜は政治的意⾒を理由として迫害を受けるおそれがあるという⼗分に理由のある恐怖を有するために国籍国の外にいる者であって,その国籍国の保護を受けることができないか⼜はそれを望まない者」です。
(出入国在留管理庁 難民認定制度の概要より)

また、難民ではなくとも「補完的保護対象者」にあてはまる方もいます。それは・・・
難民以外の者であつて難民条約の適用を受ける難民の要件のうち迫害を受けるおそれがある理由が難民条約第1条A(2)に規定する理由であること以外の要件を満たすものをいう(第2条1項3号の2)
 『難民条約第1条A(2)に規定する理由』とは、上記『難民条約の適用を受ける難民』に記した内容の事です。

このように、『出入国管理及び難民認定法』には2つの目的があることが分かりました。

そのため、その目的に基づいた規定となっているということですね。

では、在留資格とそれに関連した規定は、どのようになっているのでしょうか。

在留資格・在留期間


在留資格とは
外国人が日本に在留して「一定の活動を行うことができる」又は「一定の身分若しくは地位を有する者として活動を行うことができる」法的地位
在留期間とは
在留資格を持つ外国人が在留することのできる期間
在留期間は、在留資格ごとに法務省令に定められています。(出入国管理及び難民認定法施行規則第3条・規則別表第二)

※日本に適法に在留する外国人には、1つの在留資格と、これに対応する1つの在留期間が定められます。
※在留資格を持つ外国人の在留を「正規在留」、在留資格を持たない外国人の在留を「非正規在留」といいます。

正規在留者に関する主要な在留諸申請は6つ


①在留期間更新
②在留資格変更
③永住許可
④在留資格取得
⑤資格外活動許可
⑥就労資格証明書交付

非正規在留者への日本の対応はどうなっているの?


非正規在留者については次のような制度があります。
①在留特別許可
退去強制対象者に対して、法務大臣が特別に在留を許可すべき事情があると判断した場合に在留資格を与えることができる制度です。
②出国命令
不法残留者の中で一定の事由に該当する者に対して、身柄を拘束せず、簡易な手続きで出国させる制度です。
③仮滞在

在留資格未取得外国人が難民又は補完的保護対象者の認定申請をしたときに、法務大臣が仮に滞在することを許可するものとされていて、その仮滞在期間の間は退去強制手続を停止される制度です。

在留資格の諸類型について


①活動資格と居住資格(法別表第一と第二)
 活動資格とは、日本でどのような活動を行うかが重視される在留資格です。
 居住資格とは、日本でどのような身分・地位を有するかが重視される在留資格です。
②活動資格内の分類(就労系在留資格と非就労系在留資格)
 就労系在留資格とは、収入を伴う事業を運営する活動です。(活動資格の中でその類型に属する就労活動が可能)
 非就労系在留資格とは、報酬を受ける活動です。

難民認定を受けるとどうなる?


その外国人は、難民条約に基づく庇護を受けるべき者であることを公証され、
その結果、難民条約締約国としての日本の関係諸機関から「難民」に対する一定の庇護的処遇を受けることができます。

難民認定されたら在留資格はどうなる?


①在留資格未取得外国人に対する在留取得許可(法第61条の2の2第1項)
 原則として、「定住者」の在留資格の取得を許可する
②在留資格変更許可及び在留資格取得の許可の特則(法第61条の2の3)
 その外国人から、在留資格を「定住者」へ変更する申請がされた、
または、「定住者」の在留資格取得申請があった場合は、許可する
③難民認定を受けている外国人に係る永住許可の特則(法61条の2の14)
 独立生計要件(法第22条第2項第2号)を満たさなくとも永住許可の申請を許可できる
 

難民や補完的保護対象者の認定手続きの流れ


❶日本にいる外国人が認定の申請と難民であることの立証をする
❷難民調査官は事実の調査する
❸法務大臣は、難民又は補完的保護対象者に該当するか判断する
 該当性ありの時は認定され、該当性なしの時は不認定される
 ※ただし、法務大臣にはどのように判断するかどうかが委ねられています
❹認定されたときは、難民認定証、補完的保護対象者認定証がそれぞれ交付される
 認定をしないときは、理由を付した書面でその旨通知される

難民認定手続き中の外国人はどうなるの?


手続き中の外国人に対して、日本はどのような対応をするのでしょうか?
それについて2つの制度が設けられています。
①一時庇護のための上陸許可(法第18条の2)
日本の庇護を求める外国人は、有効な旅券や査証を持っていないので、入国条件や上陸許可条件に適合しない場合でも、入国審査官は、一定期間、日本に在留することを許可することができます。
許可を受けると、一定期間日本に在留することができます。
②仮滞在許可(法第61条の2の4)
法務大臣は、原則として、仮滞在の許可をすることとされています。
仮滞在の許可を受けると、仮滞在期間中は適法に在留することができます。

まとめ

  • 在留資格とは、外国人が日本に在留し活動するための法的地位
  • 在留資格は、活動資格や居住資格などの類型があり、その分類ごとに活動制限がある
  • 在留資格に、在留期間が定められ、日本での活動を続けるためには、更新手続きが必要
  • 難民については、難民条約に基づき、難民認定制度が法定されている

 外国人が日本で安心して適法に生活するためには、在留資格が必要です。申請手続きにお悩みの時は、書類作成の専門家である行政書士にご相談されてみてはいかがでしょうか。

行政書士ツグミ事務所のホームページ